コラム・セミナー

利上げで株価は下がる?金利上昇局面でも日本株が上昇を続ける2026年相場の構造

利上げで株価は下がる?金利上昇局面でも日本株が上昇を続ける2026年相場の構造

金利が上がると株価は下がる」——投資の教科書ではそう習います。実際、配当割引モデルなどの基本的な株価評価モデルでも、金利上昇は株価下落要因として位置づけられているもの。

ところが今、日本の状況は少し違うようです。日本銀行は2026年6月、政策金利を1.0%へと引き上げ、約31年ぶりの高水準となりました。長期金利(10年国債利回り)も7月3日には一時2.81%まで上昇し、30年ぶりの水準にあります。にもかかわらず、日経平均株価は史上最高値を更新し続けているのです。

なぜ、金利上昇のなかでも日本株は上がり続けているのでしょうか。本コラムでは、その背景を「3つの理由」と「主要セクター別の動き」に分けて整理。投資家として押さえておきたい今の日本株のメカニズムを、わかりやすく解説します。

30年ぶりの政策金利1.0%——戻ってきた「金利のある日本」

日本銀行は6月16日に政策金利(無担保コール翌日物)を0.75%から1.00%へ引き上げ、1995年以来31年ぶりの高水準としました。市場では年内に1.25%までの追加利上げも予想されており、少なくとも「金利のない日本」は終わりつつあります。また長期金利の上昇傾向も同様です。

日本国債10年物利回りは7月3日に一時2.81%まで上昇し、1996年以来30年ぶりの高水準を記録。7月6日現在も2.80%近辺で推移しており1年前と比べて1%以上高い水準が定着しています。

この金利上昇の背景には、日銀の利上げだけでなく、国債買い入れ縮小観測、円安、エネルギー高、そして財政への不安などがあると言えます。つまり、短期金利の上昇だけでなく、タームプレミアムも拡大している局面にあるという見方です。

(タームプレミアムとは、投資家が満期の長い債券を保有する際に短期金利から算出される理論値より高い利回りを要求する追加の利回りのこと。)

■日本の政策金利と長期金利の推移(2021年06月~2026年6月)

日本の政策金利と長期金利の推移(2011年〜2026年)

データ出所:TradingViewのデータを元に三井物産デジタル・アセットマネジメント作成


金利が上昇すると株価が下がる?配当割引モデルで読み解く基本ロジック

教科書的な株価モデルでは、一般的に金利上昇は株価下落要因とされています。株価を算出する最も基本的な配当割引モデルを用いて説明してみましょう。

配当割引モデルは次の式の通りです。

  • P:株価

  • D:一株当たりの配当額

  • K:割引率(株主資本コスト)

  • R:無リスク金利

  • r:株式リスクプレミアム

  • g:配当の成長率

割引率Kは、無リスク金利Rに株式プレミアムrを足したものです。通常、無リスク金利はデフォルトの確率が極めて低い国債の利回りが使われます。実務的には10年国債利回りを使うことが一般的です。

一方、リスクプレミアrとは、投資家がリスクのある資産に投資する際、安全とされる資産(国債など)の利回りを上回って要求する「追加のリターン(上乗せ利回り)」を指します。

リスクが大きい資産ほど、投資家を納得させるために高いプレミアム(見返り)が必要になるというわけです。

ここで、一株当たりの配当額が10円、10年国債利回りが2%、リスクプレミアムが4%、配当の成長率が2%の場合を見てみましょう。 

となり、株価は250円となります。

一方で長期金利が1%上昇し3%になると、

となり、株価は200円に下落します。

要するに基本的な株価モデル上では、その他の条件が一定であれば「金利上昇 → 割引率上昇 → 株価下落」という関係になるわけです。

ただし、実際の株式市場では「利益成長が金利上昇の影響を上回るか」を見極めることが肝要であり、金利上昇が即座に株価下落には結びつかないことが多々起こります。

金利上昇局面でも日本株が上がる3つの理由——業績・AI・企業統治改革

ここからは、日本が金利上昇局面にありながら株価が上昇している背景や理由を分かりやすく説明していきましょう。

一言で言えば日本株は今、「金利が上がって困る面」より「それ以上に追い風になる面」のほうが強い——市場参加者の多くがそのように見ていると言えます。

大前提として、前述の通り、金利上昇は株価には逆風です。企業の借入コストが上がり、将来の利益を割り引く割引率も上がるため、理論だけ見れば株は下がりやすくなります。

それでも日本株が上がっているのは、投資家の多くが「今の金利上昇が景気後退に結びつくものではなく、物価上昇と経済正常化の中で起きている」と見ているからです。

日銀は政策金利を31年ぶりの水準となる1.0%へ引き上げましたが、これは金融正常化の一環と見られています。日本の金利水準は歴史的に見れば低く、「日本経済がようやく金利のある世界に戻ってきた」というのが市場のとらえ方でしょう。

企業業績が堅調で、利益成長が株価を支えている

まず大きいのが、企業業績がまだ強いということです。TOPIX(東証株価指数)構成企業の2026年度の純利益は約6%増が見込まれており(*1)、その主な牽引役はエレクトロニクスと銀行です。

つまり、金利上昇があっても、それ以上に利益が増えると見られているので、株価は支えられます。特に銀行は、金利上昇で貸出利ざやが改善しやすいため、むしろ追い風になります。 

AI関連株が相場全体を押し上げている

さらに、相場を押し上げている中心がAI関連株であることも重要です。Reuters社の集計によると、半導体関連は日経平均株価指数の約25%、半導体製造事業を行う中核子会社を持つソニーや半導体製造装置向けの部品事業を行う京セラなどを含めると約35%を占めており(*2)、指数そのものがAIテーマに強く引っ張られています。

こうした銘柄は「多少の金利上昇より、AI投資拡大による利益成長」の方が大きいと見られているのです。 

企業統治改革と株主還元の強化が評価されている

加えて、企業統治改革と株主還元の強化も日本株を支えています。日本では、物言う株主であるアクティビストの圧力、東証や政府の改革促進を背景に、持ち合い解消、非中核資産売却、自社株買い、資本効率改善が進んでいることは、みなさんもご存じの通りです。

こうした流れが日本株の記録的上昇を支えていることも事実であり、これは金利とは別の「株価を押し上げる構造的な要因」と言えるでしょう

1 : Japan TOPIX firms see 6% net profit rise as AI, rates boost earnings, SMBC Nikko data shows | Reuters
2:Nikkei's record rally shifts gears as investors chase next AI darlings | Reuters

金利上昇で恩恵を受けるセクターは?銀行株・半導体関連・内需株を解説

1) 銀行株

株価が強い理由はシンプルです。金利が上がると、銀行は貸出金利を引き上げやすくなり、預金金利との差、つまり利ざやが改善しやすくなります。

日本株全体の利益見通しでも、エレクトロニクスに加えて銀行が押し上げ役とされており、金利上昇そのものが銀行には追い風です。銀行株は、「金利上昇に弱い株」ではなく、「金利上昇で稼ぎやすくなる株」と言えます。 

2) 半導体関連銘柄

金利上昇よりもAI投資ブームのほうがはるかに大きな材料です。2026年の日本株上昇は、ソフトバンクグループやアドバンテスト、東京エレクトロンだけでなく、フジクラ、古河電工、村田製作所、太陽誘電など、AIデータセンターや半導体周辺まで広がっています。

指数そのものがAI関連の強さに引っ張られている格好です。要するに、半導体株は「金利が上がるから売られる」のではなく、「AI向け需要が強すぎて、金利の悪影響を打ち消している」のです。

3)内需関連銘柄

すべての銘柄が強いわけではありません。ここは少し分けて見る必要があります。賃上げやサービス価格上昇が続いており、日本経済が長いデフレ体質から抜けつつあること自体は、内需株にはプラスです。実際、日銀や政府の見方でも、賃金上昇やサービス価格の上昇が続いています。

その一方で、燃料高や物価高は家計を圧迫しやすい点も看過できません。つまり内需株は、銀行や半導体のように全面高ではなく、価格転嫁できる企業や強いブランド・サービスを持つ企業は強い一方、家計の節約の影響を受けやすい企業は相対的に弱い。そうしたある種の「まだら模様」の状態です。 

ここまで見てきた内容を整理すると、今の日本株高は次の3点に集約できます。

  1. 銀行株は「金利上昇そのもの」が追い風になる

  2. 半導体関連銘柄は「AI投資ブーム」が金利上昇の逆風を上回る

  3. 内需関連銘柄は「正常化の恩恵はあるが、物価高で、まだら模様」

その結果、指数全体では銀行とAI関連が強く、日本株全体が上がって見える構図です。 

一言でまとめると、日本株は金利上昇に強いのではなく、金利上昇を上回る追い風を持つセクターが相場を引っ張っているということになります。特に今は、銀行とAI関連が主役で、内需関連銘柄は選別物色の段階にあると言えるでしょう。

ただし注意点もあります。今の日本株上昇はAI関連銘柄への集中がかなり強いため、米国の半導体関連銘柄が崩れたり、世界的なAI投資期待が鈍ったりすると、日本株全体も影響を受けやすい状態にあることは十分に認識しておきたいところです。

足元の日本の株価は、金利上昇に耐えているというより、別の強い材料やテーマで押し上げられている局面——そう捉えると、相場の構造が見えやすくなるはずです。

本記事は、一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品・銘柄・投資手法の勧誘または売買推奨を目的としたものではありません。掲載している情報は信頼できると考えられる情報源に基づいて作成していますが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。市場環境や経済情勢の変化により、内容が予告なく変更される場合があります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

こちらもおすすめ

執筆者

林 茂

三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社

投資顧問部長

1989年、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)入社。市場営業部でマネートレーダー等を担当した後、投信子会社に出向、日本株投信とアジア株投信のファンドマネジャーを務める。その後明治ドレスナー・アセットマネジメントで年金基金向けにグローバル株式の運用を担当。2006年からクレディ・アグリコルアセットマネジメントで日本株運用の責任者。2016年よりシンガポールの日系ファミリー・オフィスにてシニア・ポートフォリオ・マネジャー。帰国後、事業会社の自己資金運用責任者や外資系不動産会社にてCFO代理等を経て2024年6月より現職。「日本人のおカネを幸せにしよう!」がミッション。趣味はバンド活動。

この記事をシェア

カテゴリーから探す

コラム・セミナー一覧へ

ここから先は三井物産デジタル・アセットマネジメントが作成したウェブサイトです。前ページは当社が作成したものではなく、内容はウェブサイト作成者の評価・意見です。予めご了承ください。