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「金融市場のサイクルについての考え方について知りたいです」にお答えします!

「金融市場のサイクルについての考え方について知りたいです」にお答えします!

※本コラムは投資上級者向けの内容となります。

 投資行動で勝つには、安く買って高く売ることが原則ですが、それはそう簡単なことではありません。明日、来週、来月……と下がるか上がるかの正確な予想を立てることは限りなく無理に近いことです。

短期的なタイミングを正確に予想することが不可能であれば、投資家はどのように行動すればよいのでしょうか。巷間言われるように、長期投資、分散投資、積立投資だけで自分の資産を守り増やすことは果たして可能なのでしょうか。

金融市場は一定のサイクル(循環)を繰り返すと言われます。そのサイクルを正確に予測することは難しいですが、少なくとも今どの段階にいるのかを認識し、適切な行動を取ることで投資の成功確率を高められると考えられます。

本コラムでは、金融市場のサイクルを知るためのいくつかの観察ポイントを、米国市場を例にしてご紹介します。重要なことは、これから挙げる観察ポイントの一つだけで判断することは絶対に避けるべきということ、サイクルのタイミングはズレることがあるので、注意深く総合的にかつ「感情を交えず」に定点観測的に見ていくことです。

イールド・カーブ

グラフ1】米国債のイールドカーブ推移グラフィカル ユーザー インターフェイス, ヒストグラム

自動的に生成された説明

(データ出所:セントルイス連銀FREDのデータをもとに三井物産デジタル・アセットマネジメントにて作成)

イールドカーブ(利回り曲線)とは、異なる期間の債券(主に国債)の利回りをグラフにしたものです。通常、短期債券の利回りが低く、長期債券の利回りが高いため、イールドカーブは右上がり(順イールド)になります。しかし、特定の経済環境ではこの関係が逆転し、逆イールド(逆転利回り)が発生します。すなわち逆イールドとは短期金利が長期金利を上回った状態のことを言います。

国債のイールドカーブは順イールドになっている時間帯(グラフ1のプラス圏)が長いのですがが、景気サイクルの後期になると、足元の政策金利の引上げを受け、期間の短い国債の利回りは下げ止まりする一方、期間の長い国債の利回りは景気減速を織込み低下します。その結果、期間の長い国債の利回りが期間の短い国債の利回りを下回る逆イールド状態になります(グラフのマイナス圏)。

景気サイクルの終盤には、政策金利が引下げられ、逆イールド状態が解消して順イールドに戻ります(グラフ1の赤い円)。そして経験的に、ほどなく米国経済はリセッション(灰色の網掛け部分)に入ることが多いのです。更に株式市場は将来の景気動向を先回りして織込みに行くので、リセッションに入る前に株価指数はピークをつけることになります(グラフ1の赤い三角)。

ハイイールド債券と実効FF金利のスプレッド

【グラフ2】ハイイールド債券(BB格)と実効FF金利のスプレッドと株価のピーク

(データ出所:セントルイス連銀FREDのデータをもとに三井物産デジタル・アセットマネジメントにて作成)

ハイイールド債券(High-Yield Bonds)は、投資適格以下の信用格付け(BB+以下、またはBa1以下)を持つ企業や政府が発行する債券です。「ジャンク債(Junk Bonds)」とも呼ばれます。信用リスクが高い分、投資家には比較的高い利回りを提供するのが特徴です。

実効FF金利(Effective Federal Funds Rate)は、米国の金融市場において、銀行間で余剰資金を貸し借りする際の実際の金利を指します。米連邦準備制度理事会(FRB)が設定する目標FF金利(Federal Funds Rate Target Range)のレンジ内で決まる金利です。

経済成長が加速する局面ではデフォルトリスクが低下し、ハイイールド債券が選好され買い進まれる結果、利回りが低下します。景気拡大期には金融政策としてFF金利が引上げられ、ハイイールド債券の利回りと実効FF金利の差(スプレッド)が縮小します。その後景気がピークを打つと、FRBは金融緩和政策をとりFF金利を引下げます。その結果スプレッド縮小が底を打ち、反転拡大します。

過去にハイイールド債券(BB格)と実効FF金利のスプレッドが3.5%程度を下回って、底を打ち反転拡大する頃が株価指数のピークになることが多かったのです。


リスク調整後の株価収益率

【グラフ3】シラーPER(CAPEレシオ)÷ VIXとS&P500指数

(データ出所:Investing.comのデータを元に三井物産デジタル・アセットマネジメント作成)

ここではリスク調整後の株価収益率を「シラーPER(CAPEレシオ)÷ VIX指数」とします。

シラーPERとは過去10年間の1株あたり純利益の平均値をインフレ率で調整した実質純利益で計算されたPER(株価収益率)です。ノーベル経済学賞受賞者の米エール大学ロバート・シラー教授よって考案されました。

一方、VIX(Volatility Index)は別名「恐怖指数」。米シカゴ・オプション取引所が、S&P500株価指数を対象とするオプション取引のボラティリティ(変動率)を元に算出、公表している指数です。将来の相場に対する投資家心理を反映するとされており、一般的にVIXの数値が高いほど投資家の先行き不透明感が強いとされます。

そして経験的にリスク調整後の株価収益率が

  • 2.50を超えると、大相場のピークをつける

  • 0.75を下回り底を打つと、長期下落局面が大底をつける

最近では2.50を大幅に超えていますが、株価指数は最高値を更新中です。果たして今回はどうなることでしょう。

自然失業率と失業率

【グラフ4】自然失業率と失業率

(データ出所:セントルイス連銀FREDのデータをもとに三井物産デジタル・アセットマネジメントにて作成)

自然失業率とは、経済が完全雇用に近い状態でインフレが安定しているときに存在する失業率を指します。また景気サイクルと失業率は密接に関連しており、失業率の動向は経済状況を示す重要な指標です。

経済の拡大期には、経済成長が加速し、消費、投資、生産活動が活発化します。そして企業は積極的に雇用を増やすため、失業率の低下が加速し、自然失業率(約2~5%)付近まで低下します。

景気サイクルが過熱期に入ると需要が供給を上回りインフレ圧力が高まります。そのころ失業率は自然失業率を下回り最低水準に低下します(グラフ4の赤い円)。

その後、景気サイクルがピークを打ち、経済成長が減速し始めると消費や投資が減少し、企業の収益が悪化し、企業はコスト削減のために解雇や新規採用の凍結を行う結果、失業率が上昇し始める(グラフ4の赤い円)。そしてまもなくリセッション(景気後退期)に入ることになります。

そして最近では2021年12月から失業率は自然失業率を下回り、2023年の春ごろに底を打ち緩やかに上昇しており、直近では自然失業率とほぼ同じ水準まで戻っています(グラフ4の緑の円)。最近の米国雇用環境は依然として堅調ですが、求人数は減少傾向にあるので来年以降の雇用環境には注意が必要でしょう。

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)には雇用の最大化と物価の安定という2つの政策目標を課されています(デュアルマンデート)。しかしながらデュアルマンデートには下記の様なトレードオフがあります。

すなわち

  1. 雇用を増やすための緩和的金融政策による、インフレが加速するリスク

  2. 物価を安定させるための引き締め的金融政策による、雇用が犠牲になる可能性

最近の米国のインフレの粘着性を示す指標はすべてFRBの目標である2%を大きく上回っています。例えばアトランタ連銀のコアCPI指数は4%近辺で横ばいとなっているうえ、CPIの粘着性を示す主要な指標はすべて3%を上回っているのです。

それに対して米国の実質金利はプラスとなっており引続きインフレ抑制スタンスが強い状態です。この引締めスタンスが景気を減速させるリスクもあり、米国の景気サイクルは転換点を迎えつつあるようです。

まとめ

  1. サイクルの正確なタイミングを予測するのではなく、「現在どの段階にいるのか」を把握することが重要です。

  2. サイクルの後半(過熱段階)ではリスクを軽減し、初期段階や調整段階ではリスク資産への投資を検討し始めることが求められます。

  3.  群集心理に流されず、冷静に市場の状況を判断することが肝要です。

  4.  過去のサイクルの歴史を学び、それを投資判断の参考にしていきましょう。


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