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トランプ政権発足が当面の金融政策とマーケットへ与える影響

トランプ政権発足が当面の金融政策とマーケットへ与える影響

2025年1月にドナルド・トランプ氏が再び米国大統領に就任したことで、世界経済と金融市場に新たな波紋が広がっています。トランプ政権は前回の任期中に保護主義的な政策を推進し、特に関税政策や貿易戦争が注目を集めました。今回の政権発足後も、これらの政策がどのように展開されるかが焦点となっています。同時に、FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行の金融政策もマーケットに大きな影響を与える要因として注目されています。

トランプ政権の関税政策:再び保護主義へ?

トランプ政権といえば、保護主義的な貿易政策がその特徴です。前回の政権時には、中国を中心とする貿易戦争が激化し、鉄鋼やアルミニウムへの高関税を皮切りに、さまざまな中国製品に対する関税が導入されました。これによりサプライチェーンが混乱し、一部の業界ではコスト上昇が企業利益を圧迫しました。一方、米国内の製造業は一定の恩恵を受け、景気回復に貢献しました。

関税引き上げは短期的には米国内の産業を守る効果があるかもしれませんが、長期的には輸入コストの上昇や供給チェーンの混乱を引き起こすリスクがあります。また、米国と主要貿易相手国との関係悪化が予想され、世界経済全体に不確実性をもたらすでしょう。このような不透明感は、株式市場や為替市場でボラティリティを高める要因となります。

FRBの金融政策:利下げ継続か?

トランプ氏は以前からFRBに対して利下げ圧力をかけてきたことで知られています。2025年の政権発足後も、この姿勢が継続されています。トランプ大統領就任後最初のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBは4会合ぶりに金利を据え置きました。

市場はもともと今年1-3月中の利下げはないと読んでいましたが、ドル高を嫌うトランプ大統領が公然とFRBに利下げを要求していただけに、パウエル議長の対応が注目されていました。今回の金利据え置きの決定を受けて、トランプ大統領は早速FRBを厳しく批判しています。

トランプ大統領はエネルギー価格を下げてインフレ率を下げるから金利を下げよ、といっています。原油やシェールガスは「掘って掘って掘りまくる」といっています。しかし、これによるインフレ改善は容易ではありません。

FRBのインフレ判断は基調としてのインフレで、振れの大きいエネルギーや食料を除いた「コア」でみています。原油価格が下落しても、コアには直接影響しません。原油安が一般財やサービスなどに波及するのに時間がかかります。コアのインフレ改善につながるまでには原油価格を長期間安くしておかねばなりませんが、OPEC(石油輸出国機構)や産油業者がそれに耐えられるでしょうか。一見原油価格の下げはインフレ改善には良いように見えますが、上記の問題を考えると、トランプ氏が言うほど効果的ではありません。

一方で現在のインフレ率や労働市場の状況によっては、FRBが利下げに慎重な姿勢を示す可能性もあります。利下げが継続されれば、米ドル安が進行し、新興国市場には一定の恩恵をもたらすでしょう。一方で、利下げ停止されるようになれば、利下げ期待を相当程度織り込んでいる株式市場や債券市場で調整局面が訪れる可能性も否定できません。

日銀の金融政策:利上げ継続の行方

一方、日本では日銀が長期にわたり超低金利政策を維持してきましたが、昨年からインフレ率の上昇や円安への懸念から金融緩和は利上げに転換しております。日銀はこれまで3度の利上げを行い、政策金利は0.5%に、3月6日には10年国債利回りは1.5%台に上昇しました。

しかしながら、インフレ率は物価対策の政策効果を除いた実勢では4%を超えていて、実質金利は長短ともに大幅なマイナスにあります。日銀自身、この状態は十分緩和的と言っています。一方で2月6日に日銀の田村審議委員が「今後も複数回の利上げがなされ、2025年度後半には少なくとも1%には達している」との認識を示しました。更に3月5日に同内田副総裁は、来年度後半から26年度中までの1年半の間に現実の物価と基調的な物価がともに2%程度になるとし、経済・物価見通しが実現していけば「引き続き政策金利を引上げ、金融緩和度合いを調整していく。」と述べました。日銀のスタンスは利上げ方向で変わっていません。

利上げが継続されれば、円高圧力が強まり、日本企業の輸出競争力に影響を与える可能性があります。また、国内では住宅ローン金利や企業の資金調達コストが増加し、消費や投資活動にブレーキがかかるリスクもあります。一方で、利上げによって金融システムの安定性が向上し、長期的には健全な経済成長につながるとの見方もあります。

マーケットへの影響

トランプ政権の政策と日米両国の金融政策は、それぞれ異なる方向性を持ちながらも、グローバルなマーケットに複雑な影響を及ぼします。

・株式市場  

  トランプ政権による関税引き上げや保護主義的政策は、特定のセクターに恩恵を与える一方で、グローバル企業にとっては逆風となる可能性があります。また、FRBの利下げ期待や日銀の利上げ動向によって資金の流れが変化し、市場全体のボラティリティが高まることが予想されます。

・為替市場  

  米ドルと円はそれぞれ異なる方向性を持つ可能性があります。FRBによる利下げ路線が続けばドル安要因となり、一方の日銀による利上げ継続は円高圧力を強めるでしょう。このような動きは輸出入企業や投資家にとって重要な判断材料となります。

・債券市場  

  利下げ期待が強まれば米国債の利回り低下につながり、安全資産としての需要が増加する可能性があります。一方、日本では利上げによって国債利回りが上昇する可能性があり、投資家心理に悪影響を与えるでしょう。

・商品市場

1. 原油

トランプ政権下での国内生産拡大は原油価格を一時的に低下させる可能性があります。しかし、中東地域での地政学的リスクやOPEC+との競争次第では、価格変動が激しくなることも予想されます。

 2. 金

政治的不確実性や国際緊張が高まる中、安全資産としての金への需要は引き続き堅調です。特にドル安が進行する場合、金価格は上昇基調を維持する可能性があります。

3. 農産物

貿易摩擦の再燃は、大豆やトウモロコシなど主要農産物の輸出市場に影響を及ぼす可能性があります。一方で、国内農業支援策が強化される場合、供給過剰による価格低下も懸念されます。

結論

2025年のトランプ政権発足は、関税政策や金融政策を通じて世界経済とマーケットに大きな影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、それと同時に新たな投資機会も生まれる可能性も十分にあります。FRBと日銀という主要中央銀行の金融政策も、それぞれ異なる方向性を持ちながら市場動向を左右する重要な要因となります。

このような状況下においても投資の基本を守りつつ投資戦略を立てることが肝要です。

1. 分散投資の徹底  

   政策変動に対するリスクヘッジとして、多様な地域やセクターへの分散投資を心掛けましょう。

2.長期的視点の維持  

   短期的な市場変動に惑わされず、長期的な視点でポートフォリオを構築することが重要です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コラムのご感想や他に読んでみたいテーマがございましたら、お気軽に以下よりご記入ください。

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執筆者

  • オルタナ編集部

    三井物産デジタル・アセットマネジメント

    三井物産グループが提供する資産運用サービス「オルタナ(ALTERNA)」を運営中。オルタナや資産運用に関するコラムを発信しています。

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