
一般に「不動産投資」というと、「大きな金額でビルやマンションなどを購入し、賃貸収入を得る」というイメージが強いのではないでしょうか? 近年は、少額で不動産投資を始めることができる商品(不動産投資商品、以下「商品」ともいいます)が増えています。
こうした不動産投資商品のラインアップの多様化は歓迎すべきことである一方で、その仕組みや特徴を十分に理解できないままリスクの高い商品を選んでしまうケースも懸念されます。
このコラムでは、資産運用会社や証券会社などで、30年以上にわたりリスク管理や法務・コンプライアンスを担当してきた視点から、投資家の皆さんが不動産投資商品へ投資するにあたり、注目しておくべきポイントを解説していきます。

それではまず、主な不動産投資商品である「REIT(Real Estate Investment Trust)」「不動産クラウドファンディング」および「不動産デジタル証券」について、それらの仕組みや特徴についてみていきましょう。
REIT(リート)は、投資家から集めた資金で不動産を取得し、当該不動産から生じる利益(賃貸収入・売却益など)を投資家に分配する商品です。その特徴として、不動産市場への幅広い分散投資が可能なこと、またJ-REITのように証券取引所に上場している商品では流動性が高い(必要な時に売却しやすい)ことが挙げられます。
また、複数のREITに分散投資する投資信託やETFもあります(REITファンド)。REITやREITファンドが投資対象とする資産(投資対象不動産)は、運用会社がその管理・運用を行いますが、信託銀行に信託されます。そのため、REITやREITファンドの運用会社や信託銀行が倒産した場合でも、法令に基づき投資家の資産は保護される仕組みとなっています(分別管理)。
REITやREITファンドの価格は、投資対象とする不動産の値動きに左右されるほか、株式や金利などの値動きにも連動していることにより株式相場の下落や金利上昇の影響を受けやすい点に注意が必要です。
インターネット上のプラットフォームを通じて、運営する事業者が投資家からの出資により資金を集め、不動産の開発や賃貸事業に投資し、その利益を投資家に分配する商品です。
少額から投資できる点が特徴ですが、その価格は投資対象不動産の値動きに左右されるほか、一般的に運用期間が終了するまで出資金を引き出すことができません。
ブロックチェーン技術を活用し、不動産に投資する信託や匿名組合の持分を「デジタル証券(セキュリティー・トークン)」として発行・取引できるようにした新しい形の不動産投資商品です。
REITやREITファンドと同様に、投資対象不動産は運用会社が管理・運用を行いますが、信託銀行に信託されます。そのため、不動産デジタル証券の運用会社、販売会社や信託銀行が倒産した場合でも投資家の資産は保護されます。またその価格は、投資対象不動産の価格変動の影響を受けます。
なお商品の流動性については、中途売却を認めている場合があるものの、今後投資家同士が自由に売買できる取引市場(ODX、大阪デジタルエクスチェンジ)における売買取引が拡大していくことが見込まれます。
各商品の違いについてはこちらのコラムもご参考ください。
不動産デジタル証券の特徴を知る:J-REITとの違いとは?
不動産デジタル証券の特徴を知る:不動産クラウドファンディング・現物不動産との違いを解説

各不動産投資商品には、商品を運営する事業者(金融商品取引業者や不動産会社など)や商品のあるべき姿を定める法規制があり、監督官庁による指導・監督が行われています。
これらの法規制や監督体制、投資対象不動産の保護措置を知ることで、投資家保護の観点から商品の「安全度」を把握することができるのです。
商品カテゴリー | 法規制 | 監督官庁 | 投資対象不動産の保護措置 |
|---|---|---|---|
REIT(リート) | (*)投信法、金融商品取引法、 信託法など | 金融庁 | 信託銀行による分別管理・倒産隔離 |
不動産クラウドファンディング | 不動産特定共同事業法 | 国土交通省 | 事業者(不動産会社など)が不動産を保有 |
不動産デジタル証券 | 金融商品取引法, 信託法など | 金融庁 | 信託銀行による分別管理・倒産隔離 |
(*)投資信託及び投資法人に関する法律
一般に不動産投資商品の事業者は、投資対象としている不動産(レジデンス、ホテル、オフィスビル、商業施設など)に関する情報を開示しています。
投資家は、事業者が開示する資料(例:商品概要を説明する資料や法令で定められた書面など)を通じて、投資対象不動産の物件の概要、収支状況(稼働率、賃料収入や維持管理・修繕費など)や運用状況を確認できます。
具体的には、立地、築年数、建物の構造、稼働率、収支状況(賃料収入、維持管理費、修繕費など)といった情報です。
これらの情報は、不動産投資商品への投資判断を行ううえで大変重要なため、わかりやすく適時に開示・説明がなされているかどうかを確認しましょう。
可能であれば、実際に投資対象不動産を見に行くことも、商品の価値を知るうえで有効な手段です。
不動産投資商品への投資から得られる分配金の原資についても確認しておきましょう。原資の主なものは、投資対象不動産から得られる賃料収入です。
事業者が提示する予想分配金の源泉には、主に以下のパターンがあり、商品のリスク特性は大きく異なります。
賃料収入のみを源泉とするもの
賃料収入に加えて、将来の不動産売却益を含むもの
将来の不動産売却益は不確実性が高いため、商品特有のリスクとなります。そのため、不動産売却益を含んだ予想分配水準の表示であるかどうかを確認する必要があります。特定口座の利用可否や確定申告の要否といった税務上の取り扱いも、個人投資家にとっては重要な確認ポイントでしょう。

不動産投資商品が抱える主なリスクには、(1)商品のスキームそのものに潜むリスク、(2)市場の動向に晒(さら)されるリスクのふたつがあります。
不動産投資商品は商品の仕組み(スキーム)が複雑であるがゆえに、スキームの関係者(事業者を含む)が倒産した場合に、投資家への分配や投資資金の返還に危険が及ぶ場合があります。
そのため、スキームの関係者が倒産した場合において投資対象不動産が保護される仕組みとなっていることや、事業者・不動産投資商品に対する監督や監査の体制、情報開示の状況が十分であることを確認しましょう。
例えば、次のような場合にはスキーム自体にリスクが潜んでいる可能性があるため、注意が必要です。
関連法規制に基づく登録や許認可の状況が未開示
事業者の所在地や代表者情報が不明確
投資家が提供した投資資金や出資金の預託方法や管理方法が不明確
「高利回りを保証」「元本確保」など誇張された広告表現
投資家が提供した投資資金や出資金の預託方法や管理方法が不明確
不動産市場は、景気動向や需給の変動に大きく影響を受けます。これらを要因として、空室率(稼動率)や賃料水準が変動します。さらに金利上昇局面では、賃料水準と借入コストのバランスが変化し、配当の水準に影響することがあります。
また、投資対象不動産のタイプによっても影響の受け方は異なります。例えば、ホテルや商業施設は観光需要の動向に左右されやすいといった特徴があります。
こうした不動産市場のリスクへの対応として有効なのが、異なるタイプの不動産への分散投資です。また、短期的な市場変動に過度に反応せず、中長期的な視点で投資判断を行うことも肝要でしょう。
不動産投資商品は、「どの不動産に、どの様なスキームで、誰が運営しているか」によって、その商品性やリスクがまったく異なります。配当の予想水準のみで判断せず、各商品の商品概要説明書、契約締結前交付書面、目論見書などをよくお読みいただくとともに、以下の点も合わせて確認したうえで、投資判断を行うことが重要です。
法規制と監督体制
商品の仕組み(スキーム)
情報開示の状況
予想分配金や予想配当の源泉
不動産の品質管理体制
商品スキームに潜むリスク
市場動向に晒されるリスク
ただし、投資経験の浅い方にとっては、これまでお伝えしたポイントのすべてを開示資料などから判断することは容易ではないと思います。実は、「この商品の内容には何となく違和感がある」「リスクを感じる」といった直感も投資判断における大切な要素となるのです。
長年の投資経験やデータに基づく分析はもちろん有効ですが、もっとも重要なのは「自分自身が不動産投資商品の内容やリスクを十分に理解し、納得して投資判断ができるか」という点です。
データに基づくにせよ、直感にせよ「納得できない商品には投資しない」——これも立派な投資判断のひとつと言えるでしょう。周りの声に左右されず、ご自身で商品を見極めることが何より大切です。
三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社
投資顧問部シニアマネージャー
三井住友銀行で個人・法人営業に従事後、モルガン・スタンレー証券、ドレスナー銀行を経て東京海上日動火災保険にて財務リスク管理を経験。野村アセットマネジメントでは運用資産の定量分析および法務・コンプライアンス業務に従事。野村グループ下の複数社でファンドラップの法務・コンプライアンス業務に携わる。2023年より現職。拓殖大学大学院講師。
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