
本記事は、オフィス投資についての解説記事です。
オフィスビルは、不動産の中でも代表的なアセットタイプの1つで、年金基金・保険会社・REIT(不動産投資信託)などの機関投資家が厚く資金を配分する「王道セクター」です。
今回は、株式などの経験はあるものの「オフィスビルの個別投資は初めて」という方に向けて、オフィス投資の基礎知識や魅力、投資の際に見るべきポイントなどを解説します。
オフィス投資とは、企業に貸し出すオフィスビルを保有し、賃料収入を得る投資手法です。
マンション投資が個人向けに「住居」を貸すのに対し、オフィス投資は法人テナントに「事業スペース」を提供します。

オフィス投資の基本構造は意外とシンプルで、主な収入・支出は以下のようになっています。
区分 | 内容 |
|---|---|
収入 | 賃料+共益費(メイン)、 |
支出 | 運営費(清掃・警備等)、 |
オフィスビルの価値を決める要素として特に重要なものは以下の3つです。

これらはテナント需要などに直結し、最終的に賃料と稼働率を左右します。
また、③は環境認証を重視する機関投資家が増えており、出口(売却)リスクの軽減にもつながります。
オフィスビルを分類する方法として、オフィスビルのグレード(クラス)があります。
これは不動産サービス会社各社が、立地・規模・建物スペックなどの観点で独自の基準を設けており、業界統一基準のようなものはありませんが、オフィスビルグレードの中でも上位となる「Aクラス」の定義は、投資判断や賃貸戦略において重要な指標となっています。
参考までに、CBRE、JLL、三幸エステートの3社におけるAクラスオフィスの定義をご紹介します。
会社名 | 主な定義・基準(東京) |
|---|---|
・都心5区が中心 | |
・都心5区 | |
・都心5区主要オフィス街など |
オフィスビルは、不動産投資のプロマーケットでは最も取引される物件タイプの1つです。
三井住友トラスト基礎研究所の「不動産私募ファンドに関する実態調査~2025年7月 調査結果~」によれば、ファンド運用資産のうちオフィス比率は39%と最も高い結果となっています。
オフィス投資が選ばれる背景には、以下のような特徴が影響しています。
一般に、オフィス物件は不動産の中でも取引事例が多く、特に都心部の優良物件は買い手がつきやすく、売却(出口)戦略を立てやすい点が魅力です。
「最後に売れるかどうか」が重要な不動産投資において、オフィスは安心感があります。
日本のオフィス契約は、定期建物賃貸借や2年更新などの普通建物賃貸借契約が一般的ですが、実際には長期利用が多い傾向です。
ザイマックス総研(2018年)によると、入居中テナントも含めたオフィステナントの平均入居期間は9.6年で、移転コストの高さなどもあり、頻繁な解約は起きにくい構造となっています。
このため、比較的オフィスビルは賃料の見通しが立てやすいと言われています。
これは物件にもよりますが、共用部のリニューアル、省エネ改修、ウェルビーイング対応などにより、賃料・稼働率の上振れを期待できる場合があります。「買って終わり」ではなく、「運用して育てる」資産として魅力があります。
オフィスは安定的な収益が期待できる一方で、市況変化や金利動向などのリスク管理が欠かせません。
まず、オフィス賃料の動きに影響する「市況サイクル」を理解しておきましょう。
オフィスビルの賃料には一定のサイクルがあると言われています。
例えば、JLL社のプロパティ・クロック(不動産時計)においては、オフィス市場は次の4段階で推移すると仮定しています。
①賃料下落の加速→②下落の減速→③上昇の加速→④上昇の減速
その上で、投資対象エリアの賃料推移が上記サイクルのどこに位置するかを確認することで、今後の賃料推移や転換期かどうかの目安を確認することができます。(もちろん絶対的なものではありません。あくまで参考指標の1つとしてご活用ください)
【参考】名古屋のオフィスプロパティ・クロック

また、直近(2025年Q2〜9月のスナップショット)の日本の三大都市(東京・大阪・名古屋)のオフィス市況は、三大都市とも中心部×高グレードを中心に賃料上昇・空室率低下が確認できています。
【参考】以下、深く知りたい方向け。読み飛ばしていただいて構いません。
東京(主に都心5区)
2025年Q2:Grade A空室率1.4%(4年ぶりに2%割れ)。全グレード賃料上昇、Grade Aの伸びが最も大きい=グレードアップ移転・増床が牽引。(参考:CBRE Japan)
2025年8月:都心5区1.49%、周辺18区3.08%と中心部優位(大規模ビルの方が空室率が低い)。(参考:ザイマックス総研)
2025年9月:都心5区の平均空室率2.68%。区別では千代田1.61%/港3.07%/渋谷2.09%等=中心・高賃料エリアほど空室率が低い。(参考:三鬼商事株式会社)
大阪
2025年Q2:Grade Aの空室率低下/賃料上昇が継続(テナント需要は拡張・グレードアップ移転中心)。(参考:CBRE Japan)
2025年9月:大阪ビジネス地区空室率3.67%、梅田3.73%、淀屋橋本町4.09%など中核エリアの空室消化が先行。(参考:三鬼商事株式会社)
名古屋
2025年9月:名古屋ビジネス地区空室率3.71%、名駅2.94%まで低下。駅前・新築・高グレード側に需要集中。(参考:三鬼商事株式会社)
2025年Q2:Grade A空室率1.4%(約4年ぶりに2%割れ)、Grade A賃料+1.5%。(参考:CBRE Japan)
その他、オフィス投資の主要リスクは以下の通りです。
リスク | 主な原因 | 対処方法(例) |
|---|---|---|
空室・賃料下落 | 景気後退・大量供給 | 立地×仕様重視(Aクラス) |
金利・キャップレート上昇 | 金利上昇は価格下押し要因 | LTV(借入比率)抑制 |
設備老朽化 | 空調・電源・耐震性能の劣化 | 計画的に資本的支出(CAPEX)を積む、BCP対応など |
ESG規制 | 省エネ義務・開示強化 | CASBEE認証、再エネ導入、可視化対応 |
コロナ禍でテレワークが急速に普及した中で「今後、オフィスは不要になってしまうのではないか」と考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
パーソル総合研究所「第十回 テレワークに関する調査(2025年7月)」によれば、2022年をピークにテレワーク率は減少し、2023〜2025年は22%台で安定しており、現在では多くの企業が「出社中心」へ回帰しています。
出社回帰と同時に、快適性・健康性(ウェルビーイング)と環境性能(ESG)を重視する潮流が拡大しています。
ザイマックス総研の調査(2021年)では、ウェルビーイング性能の高いオフィスは賃料プレミアム(+6.4%)があるとされています。
ウェルビーイング・オフィスは、
空気質・採光・温熱・音環境の最適化
リラックスできる休憩スペース
コミュニケーションを促す共用部
集中とコラボレーションの両立設計
といった特徴を備えたオフィスビルのことで、コロナ禍を経て、オフィスに「質」を求めるトレンドがあると考えられています。
ここまで見てきたトレンドも踏まえて、オフィス投資において、今後どのような点に注目すれば良いのでしょうか。いくつかポイントをご紹介します。
今後も優秀人材の確保を重視する成長企業ほどオフィス環境に投資すると考えられます。
採用力の強化・協業促進・ブランディングを目的に、より広く、立地が良く、スペックの高いオフィスビルへの移転が加速すると考えられます。
ウェルビーイングの観点も重要です。出社したくなるような設備仕様が、テナント満足度と定着率を押し上げる要因になると考えられます。
オフィス投資においては、規模感・立地・設備仕様の充実度合いをしっかり見る必要があります。
CASBEE等の認証、省エネ・再エネ導入は世界的潮流です。
テナント企業の環境配慮の発信にも貢献することができ、特に大手企業からの需要の底堅さと資産価値の維持・向上に繋がります。
また、オフィス投資において上記のような環境性能(認証)を重視する機関投資家も増えており、出口戦略(買い手の見つかりやすさ)に影響が出てくるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
オフィス投資は、流動性と安定収益を兼ね備えた、「不動産投資の王道」と言えるでしょう。
コロナ後の現在は、「出社回帰」と「ウェルビーイング志向」の追い風を受け、高品質で環境に優しいオフィスビルへの需要が再び高まっています。
市況サイクルなどへの対策を怠らず、立地・建物スペック・環境性能の三要素を重視することが重要です。

本コラムが皆様のオフィス投資の参考になれば幸いです。
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