
「利回りはもっと高くできないですか?」にお答えします!
※本記事は、ALTERNA(オルタナ)のお問い合わせなどに寄せられたご質問・ご意見に、ALTERNAの中の人(三井物産デジタル・アセットマネジメントの社員)が赤裸々にお答えしていくコンテンツです。
今回のご質問は、こちら。
「オルタナの商品は、他の商品と比べて利回りが低くないですか?」
様々な金融商品がある中で、「利回り」の高い低いを判断するには、その背景からご説明していく必要があると考えました。
同じリスクならば、利回りは高いほうが良いに決まっているのですが、ほとんどのケースはリスクも異なっているので、最終的には投資する方がどの程度のリスクを取りたいか、という点にたどり着きます。
(正確ではない前提で)あえて簡単に申し上げれば、
「10%の利回り商品は、10%の損を出す可能性があり」
「3%の利回り商品は、3%の損が出る可能性がある」
そんな風に見て頂けると、投資判断の参考になりますでしょうか。
では、少し長い話になりますが、よろしくお願いいたします。
まとめ
- 「利回り」の源泉となる収益には、安定した家賃収入などからくる配当収益(インカムゲイン)と、元本の変動からくる売買損益(キャピタルゲイン)の2つがあります。
- 一般に不動産では、配当収益は比較的安定しており実現性が高く、売買損益は不確実性が高いです。ALTERNAの利回りは配当収益のみを表示しています。
- 不動産の利回りは、不動産の立地、アセットクラス(不動産の種類)、建物の状況などにより、期待される利回りは異なります。
- 借入の活用により効果的に利回りを高めることができますが、借入比率が高まれば高まるほど、金利上昇・不動産価格下落時のリスクも高まります。ALTERNAも借入を活用していますが、リスク・リターンのバランスを見て、借入比率を高めすぎないような方針をとっています。
「利回り」とは?
「利回り」と聞くと、株の配当や債券の利子など、安定した収益をイメージしがちです。
しかし、大半の金融商品では、そのような「配当収益」に加えて、元本の変動からくる「売買損益」を合わせたものを「投資収益」と呼んでいて、投資収益を投資元本で割り算し、年率に直したものが「利回り」です。
例えば、以下のような表示がされている商品があったとします。
- 想定利回り 5%(年率)
- インカムゲイン相当 2%(年率)
- キャピタルゲイン相当 3%(年率)
これは、家賃収入などからくる安定収入(インカムゲイン)が2%、将来の売却益からくる収入(キャピタルゲイン)が3%で、それらを合計して想定利回り 5%と表示されています。
不動産で考えると、(もちろん物件次第ではあるものの)家賃収入は比較的安定していますが、将来の売却益は約束されたものではないため、想定利回りを 2%と保守的に見ておく視点もあると思います。
また、年率に換算することに伴い、投資期間が短いものは、利回りが高く見える点にも注意が必要です。
例えば、100の投資を行い、2のインカムゲインと、3のキャピタルゲインを得られる投資機会があったとします。
- 期間1年で投資する場合の利回りは、5%(年率)です
- 期間3ヶ月で投資する場合の利回りは、3のキャピタルゲインが4倍に換算されますので、14%(年率)と表示されます
- どちらも100の投資から5が得られる投資機会ですが、時間軸の違いにより、利回りの数字はかなり印象が違うものとなります。
※分配金は期間按分されて2%(年率)のままとしています
このように、「利回り」は安定した賃貸収益のみを表示されているわけではなく、また投資期間の影響を受けます。
実際、インカムゲイン(配当収益)とキャピタルゲイン(売却収益)は、実現可能性が全く異なりますので、「利回り」の大小比較を、表示されている数字のみで行うことには注意が必要です。
「利回り」の中には、配当収益と売却収益が含まれている点は、前段でご説明したとおりです。
ALTERNAを含めたデジタル証券は、いまのところ「配当収益」のみを表示しているケースが多いです。
一方、デジタル証券とよく比較される「不動産クラウドファンディング」などは一般に「売却益」を重視しているものが多いようです。
中には家賃配当がなく全て売却益で計算されているものもあり、未来に期待される価格で売却できるのか、利回り達成の蓋然性(確実性)について、慎重に検討していただくのが良いかもしれません。
また、一般に不動産クラウドファンディングの収益は雑所得として取扱いがなされるため、課税所得の高い方は、収益が発生しても確定申告時に最大 約55%の税負担がある点にも注意が必要です。
不動産の利回りの高低はどう見ればいい?
また、不動産の利回りを考える上では、
- 「利回り」にも様々な種類(定義)があること
- 立地、アセットクラス(不動産の種類)、建物の状況などにより、期待される利回りは異なること
について理解しておくことも重要です。
まず、利回りの定義については「どこまでのコストを織り込んだ利回りなのか」によっていくつか種類があります。
用語についてはやや専門的な話なので、「こういうものもあるんだな」ということで、読み飛ばして頂いても構いません。
①表面利回り
表面利回りは、コストを織り込まず、買った価格に対して、どれだけの収入があるのかを見る指標です。
グロス利回りなどとも表現されます。
具体的には「年間家賃収入(不動産賃貸事業収入)÷ 購入価格」で計算されます。
②NOI利回り
NOI利回りは、不動産の取得・運用に関わるコストを織り込んだ、収益効率を見る指標です。
NOIはNet Operating Incomeの略で、純(営業)収益と呼ばれます。
実質利回り、ネット利回りなどとも表現されます。
具体的には「(年間家賃収入 – 賃貸事業費用)÷ (購入価格 + 購入時の諸コスト)」で計算されます。
賃貸事用費用は、管理費用や固定資産税などの諸経費を指し、一般的には現金支出に関係しない減価償却費や借入負債の支払い利息などは含みません。
③分配金利回り(税引前・税引後)
不動産をファンドで取得した場合は、投資家の皆様に配当される分配金の収益効率を見る指標として、分配金利回りが使用されます。具体的には、NOIから借入の金利の支払いや資産運用会社への報酬などの経費、ファンドへのリザーブ金などを差し引いたものとなります。
また、分配金に係る税額は、1人1人異なる場合があるため、分配金利回りは税引前で表現されることが多いのが特徴です。
分配金利回り(税引前)は、「(NOI – ファンドで係る経費)÷ (投資金額)」で計算されます。
ALTERNAで表示される利回りは、この分配金利回り(税引前)を採用しています。
そして、次は「不動産の立地、アセットクラス(不動産の種類)、建物の状況などにより、期待される利回りは異なる」という説明をさせていただきたいと思います。
ここで大事な原則をお話しておきます。
それは、
- 「多くの人が欲しいと思うもの」は
- 安定性が高い(借主・買主が見つかりやすい)反面
- 利回りは低くなる傾向にある
というものです。
例えば、日本不動産研究所のデータによれば、標準的なAクラスオフィスビルのエリア別のNOI利回りは、以下のようになっています。(※)
- 大手町地区 :2.9%
- 日本橋駅・虎ノ門駅周辺 :3.2%
- 池袋駅・大崎駅周辺 :3.7%
- 横浜(横浜駅西口周辺) :4.1%
- さいたま(大宮駅周辺) :4.5%
- 広島(紙屋町、八丁堀) :5.0%
- 秋田市、宇都宮市、大分市:6.5%
※参考:第48回不動産投資家調査(2023年4月現在)、資料上は取引利回りとして「NOI ÷ 市場価格」で計算されています
これを見ていただければ分かる通り(オフィスの場合は)都心ならば利回りが低く、都心から離れるほど利回りが高い傾向にあります。
当然のことながら「利回りが高い = 無条件に良い」ということではなく、都心から離れるほど、不動産の借主が見つかりづらかったり、売却先が見つかりづらかったりする傾向にあるため、相対的にリスクが高まるということでもあります。
利回りを高める「レバレッジ」とは?
次に、利回りと密接な関係がある「レバレッジ」について触れておきたいと思います。
レバレッジは直訳すると「てこの作用」で、簡単にいうと
「借入を利用することで、投資の収益性を高める効果が期待できる」
効果のことです。もう少し詳しく見てみましょう。
影響① 分配金(配当)利回り
ここに価格100で収入3の不動産があるとします。
この不動産に投資できるファンドに100で出資を行った場合、諸々のコストを無視すれば、分配金は3となり、分配金利回りは3となります。
ここで、出資を50に抑えて、残り50は金利1%で借入を行ったとします。
この場合、金利支払は0.5となるため、残りの2.5が分配金となり、分配金利回りは5%となります。
このように、分配金よりも低い金利で借入を行うことで、分配金利回りを高めることができます。
さらに借入を行うと、どうなるでしょうか? もちろん分配金利回りは高まります。
一般に借入比率を上げると金利が上がるのですが、一旦これを無視して、同じ金利で75の借入を行ったとすると、レバレッジ効果はさらに高まり、分配金利回りは9%となります。
しかし、もちろんリスクもあります。
例えば、借入金利が上昇したケース。
仮に、金利が1%から4%に上昇したとすると、借入50、75のケースは以下のようになります。
このように、借入比率を上げるほど、分配金利回りを高める効果が期待できますが、その分、金利上昇などに伴う分配金の減少リスクが高まります。
影響➁ 売買損益
次に、売買損益と借入比率の関係を見ていきます。
価格100の不動産が、110で売れたとします。
この場合、売却益は10、これに出資者の売却益も10となり、償還額(売却時に返ってくるお金)は出資額に対して1.1倍となります。
ここで、先ほどから見てきた借入50、75のケースの売却益は、以下のようになります。
このように、売却益が出たときは、借入比率が高いほど、収益性が高まります。
一方、売却損が出たときは、どうなるでしょうか。
借入は出資に優先して返済されるため、売却損はまず出資者の負担となり、上記のように、借入比率が高いほど収益性が下がり、損をするリスクが高まります。
ここでお伝えしたいことは、必ずしも借入が「悪」というわけではありません。
適切に借入を活用することで、効果的に収益性を高めることができます。
しかしながら、借入比率が高まれば高まるほど、金利上昇・不動産価格下落時のリスクが高まります。
このため、利回りを見る時は、借入を活用しているか(そして借入比率はどうなっているか)も合わせて確認していただくことで、リスク・リターンをより適切に判断いただくことができます。
なお、ALTERNAの場合は(物件にもよりますが)借入比率(Loan to Value = LTV)は40〜60%の水準を1つの目安としています。
ご参考までに、当社以外の商品も含めた「不動産デジタル証券の利回りとLTVの比較表」を掲載させていただきます。
この表を見ても、同じアセットタイプで比較すると「分配金利回りとLTVの相関性(利回りが高いものはLTVが高い傾向にある)」や「エリアが異なると利回りも異なる(都心に近いほど利回りは低い)」といった傾向があることをご確認いただけるかと思います。
まとめ(再掲)
- 「利回り」の源泉となる収益には、安定した家賃収入などからくる配当収益(インカムゲイン)と、元本の変動からくる売買損益(キャピタルゲイン)の2つがあります。
- 一般に不動産では、配当収益は比較的安定しており実現性が高く、売買損益は不確実性が高いです。ALTERNAの利回りは配当収益のみを表示しています。
- 不動産の利回りは、不動産の立地、アセットクラス(不動産の種類)、建物の状況などにより、期待される利回りは異なります。
- 借入の活用により効果的に利回りを高めることができますが、借入比率が高まれば高まるほど、金利上昇・不動産価格下落時のリスクも高まります。ALTERNAも借入を活用していますが、リスク・リターンのバランスを見て、借入比率を高めすぎないような方針をとっています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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